山に囲まれた南阿蘇から、太平洋を眺めながらのドライブ。宮崎市からは内陸に向かってのどかな田園風景の中をしばらく走ると、そこは有機農業や照葉樹林で人気を集め、移住者も多いという東諸県郡綾町および国富町。
目的の場所まで車を走らせていると見たことのない大きな網が、まるで太陽光発電のように空を見上げて何枚も何枚も連なっています。
近くで大根引きをしているおばあちゃんに話を聞くと、それは「せん切り大根」を干す網だとか。この地で育った大根を、細く切って網の上に広げ、宮崎の太陽の光をいっぱいに受けて作られるせん切り大根。ああ、美味しいだろうなあ。
それからさらに畑の中や民家の間を通り抜け、人気のない山道を奥に奥にと進んでいくと、突然何台もの車が現れます。そこが、竹炭工場。トタンの屋根には草が生え、暗い工場の中からはガタンガタンと規則的な音が聞こえてきます。
職人さんたちが、一本一本竹を機械で割っていき、さらにそれを窯に入れやすいように束ねていきます。
呆れるくらい、手作業。
かじかんだ手を温めてくれるのは、ドラム缶の中で赤々と燃える竹の破片。きっと何十年もこの作業は繰り返されているのでしょう。
束ねた竹は、年季の入った手作りの窯に入れられ、入り口は泥で塗り固めて密閉します。
そして、何日間も高温で焼かれ、何日かかけて窯内の温度を下げ、上質の炭が出来上がります。
次に竹林へ案内していただきました。
何十年も前に、この竹林を手入れする人もなく荒れていく一方だったのを見た一人の男性が、この竹林を美しい竹林に蘇らせようと努力した結果、今の林が出来上がったとのこと。
空に届きそうな背の高い竹が、風を受けてサワサワと揺れ、そのたびに青く優しい香りが鼻先に届きます。
ここでも職人さんが竹にロープを括り付け、チェーンソーを唸らせると1本ずつ間違いなく倒したい方向に竹を倒していきます。
竹が倒れて行く様は圧巻。職人さんたちは慣れた手つきで枝を落とし、竹の長さをそろえていき、1つの山に重ねます。
こんなにも人の手によって生まれた竹炭であることを知って、その価値を知りました。
石鹸にはこの上質な竹炭を使用し、竹炭工場の人々や竹林の優しい風をイメージして作りました。
ほのかに香る竹炭の燻された香りをお楽しみください。